REPORT
2024.11.25

福岡地域戦略推進協議会 事務局長 石丸修平様

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福岡地域戦略推進協議会(FDC) 事務局長石丸修平様

【石丸様プロフィール】
経済産業省、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)等を経て、2015年4月より福岡地域戦略推進協議会(FDC)事務局長。 アビスパ福岡アドバイザリーボード(経営諮問委員会)委員長、九州大学科学技術イノベーション政策教育研究センター(CSTIPS)客員教授、九州大学地域政策デザインスクール理事、Future Center Alliance Japan(FCAJ)理事、九州経済連合会規制改革推進部会長等を歴任。 中央省庁や地方自治体の委員など公職も多数務める。

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福岡地域戦略推進協議会(以下FDC)設立の経緯と今後目指す先を教えていただけますか。

FDCが設立されたのは2011年のことで、当時日本経済全体が不景気の中、福岡市が支店経済から脱却し、自立した経済を作っていかなければいけないというタイミングでした。 加えて、提言を社会実装する担い手の不在や、政策決定への民間の関与が弱いなどの課題が数多く見えてきた状況でもありました。 それらを克服するため、成長戦略の策定から推進までを一貫して行う産学官民一体となったシンク&ドゥタンクとしてFDCは設立されました。
また、世界的な先進都市の政策単位が「都市」から「都市圏」に移行していることを踏まえ、「福岡都市圏」を核として、域外からも企業や団体が参画し、官民連携や広域連携を行っていることもFDCの大きな特徴です。 都市圏という生活圏単位でのまちづくりが重要という考えのもと、福岡市だけにとどまらず、福岡都市圏をはじめ九州の各地域とプロジェクトに取り組んでいます。

FDCでのこれまでの取組や、事務局長としてのご経験を踏まえ、地方都市における現在の課題とそれを乗り越えるために必要なことは何でしょうか。

地域ごとにそれぞれ特徴があるため、抱える課題も様々だと思います。 ただ、近年GDPに代わって人々の豊かさや幸福度を示す「ウェルビーイング」が注目されているように、「何を大事にしてまちをつくっていくのか」といったまちづくりの理念におけるパラダイムシフトがここ数年で急速に進んでいます。 この変革への対応は地方に共通した課題の一つだと思います。
これまでのように単純に経済指標だけでは測れない要素が重視されつつある中で、まちづくりの成果をどのような指標をもって評価していくのか。 新しい価値観にあったその都市独自のメルクマールをつくっていくことはこれからチャレンジしていく必要がある領域だと思います。

福岡市・FDCは官民共創の最先端を走る都市・組織だと思います。共創の機運を作るために大切なものは何でしょうか。

やはり旗印となる強いメッセージが必要だと思います。例えば福岡市では高島市長が2012年に「スタートアップ都市宣言」を行いました。 これは福岡市がスタートアップに取り組む人々を後押しするという明確なメッセージです。 その後、市内中心部に「Fukuoka Growth Next」というスタートアップ支援施設を設けましたが、ここでは起業の相談から開業手続、創業後の事業成長を一気通貫で支援するなど、スタートアップ関連の話は全てワンストップで完結できるようになっています。 宣言から10数年が経過しましたが、福岡市はどんどんチャレンジに寛容なまちになり、学生からシニアまで幅広い層でスタートアップや起業に取り組む人が増えています。 このようにとてもわかりやすい旗を立てることで、行動が生まれ、取り組みが前に進み、さらには共創の機運が一層高まっていくという好循環を生み出せていると思います。

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石丸様からみて札幌はどのようなまちでしょうか。

歴史的にも福岡は民間主導、札幌は行政主導と言われていますが、実際に札幌は公共がフレキシブルでイノベーティブな印象があります。 FDCの取組など、札幌から福岡に関心を持ってくださることもある一方で、都市開発の領域など、福岡が札幌をベンチマークしたりもしています。 これからも福岡と札幌でお互いに学び合いながらチャレンジを進めていく関係が作れると良いと思っています。 将来的には、民間提案を共有する取組や、我々で北と南の両極からコンソーシアムを作り、日本を変えていく、といったこともできたら面白いですよね。

今後札幌市で官民共創の動きが進み、第三者的な組織ができるとなった時に、先達としてアドバイスはありますか。

「官」と「民」の第三者的な立場として、他の組織から独立して主体的に意思決定していくことは大事だと思います。 また、行政と民間の間で、考え方やスピード感は全く異なるので、その認識の差を埋めて、双方をマネジメントしていく。 そういう双方の間に立つリエゾン的な機能や役割も重要であると思っています。 最終的には、我々のような組織が先導せずとも官民で取組が動いていき、私たちが完全に裏方になるような、そんなまちづくりができるようになることが理想だと思います。
札幌の民間のコミュニティとも懇意にしていて、FDCに関心を持ってもらっているので、札幌にFDCのような組織や仕組みを作られることがあれば支援したいですし、一緒に何かやれたらいいなと思います。

 

インタビューを終えて

今回は、福岡市と連携しながら産学官民一体でまちづくりを推進するFDCの事務局長、石丸様にお話を伺いました。 札幌市も官民共創の取組を推進していますが、福岡市の事例も参考にするとともに連携、協力しながら、日本の北と南から新たな潮流を生みだしていけるよう、さらなる共創の実現に向けて取り組んでまいります。  
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