REPORT
2024.10.16

渋谷未来デザイン 理事・事務局長 長田新子様 インタビュー

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渋谷未来デザイン 理事・事務局長長田新子様

【長田様プロフィール】
AT&T、ノキアにて通信・企業システムの営業、マーケティング及び広報責任者を経て2007年にレッドブル・ジャパンに入社。エナジードリンクのカテゴリー確立及びブランド・製品を市場に浸透させるべく従事し、2017年に退社。 2018年から渋谷区が主体になり設立された(一社)渋谷未来デザイン理事・事務局長として、都市の多様な可能性をデザインするプロジェクト活動を推進。 2018年には、NEW KIDS(株)を立ち上げ、ブランド・コミュニティ・アスリート・イベント関連のアドバイザーや講演活動等を行いながら、行政活動支援、業界発展からスタートアップ支援まで幅広く活動している。

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「渋谷未来デザイン」の取組を教えていただけますか。

「渋谷未来デザイン」は、渋谷区と民間事業者が一緒になって立ち上げた団体で、産官学民が共に課題解決を行う、それぞれの強みを持ち寄り新しい可能性を見出すためのイノベーションハブとして活動しています。 私たちのミッションは、多様な個性や価値観を原動力に、都市の可能性を広げ、新たな価値を生み出すことです。 そのために、渋谷区と連携して都市課題を抽出し、その解決に向けて様々な主体によるコンソーシアム型のプロジェクトをどんどん作っています。

官民連携、産官学民連携を行う意義はどのようなところにありますか。

地域で新しい価値を生み出していくためには、民間事業者が持つ最新の技術、サービスやプロダクト、それらの持つ力を地域で活かしていく必要があると思います。 そのためには行政や地域がその受け皿を作るということが必要不可欠です。 また、昨今の時流として民間事業者は顧客への貢献だけではなく、地域の生活者に対してどのような価値が生み出せるのかを考えていくべき時代となっています。 これまでの大量生産大量消費の時代が限界を迎え、持続可能で多様な価値観に対応した共創の時代にここ数年で変化しています。 官民連携、産官学民連携により新しい価値を生み出していく活動は、今こそ重要だと考えています。

連携によって新しい価値が生まれた事例をご紹介いただけますか。

一つ目は、コロナ禍にKDDI(株)と行った渋谷区公認の都市連動型メタバース「バーチャル渋谷」のプロジェクトです。デジタル空間にバーチャルな渋谷の街をつくるという取組で、外出が制限された中でも多くの人に渋谷を楽しんでもらい、メディアでも大きな反響がありました。さらに、この知見をもとに、他都市へも活動が発展し、プロジェクトが事業化されたほかにも、バーチャルシティコンソーシアムを立ち上げ、都市連動型メタバースに関するガイドラインも公開することができました。
ひとつのプロジェクトが実証実験にとどまらず、事業としても成長する萌芽であるということは、産官学民連携を行う意義がある、そしてそこに投資する意味があるということだと思います。
二つ目の例は、アサヒビール(株)と連携した「渋谷スマートドリンキングプロジェクト」です。 路上飲酒などの飲酒に関する課題を抱える渋谷区とともに、お酒を飲める人と飲めない人がどのように共存するかを考えていくために、2021年にスタートしました。 2022年には、スマートドリンキング推進に向け、アサヒビール(株)と(株)電通デジタルによる合弁会社スマドリ(株)が設立され、共に取組を進めています。 このプロジェクトから生まれた『スマドリバー渋谷』は「第15回 日本マーケティング大賞」のグランプリを受賞しました。受賞の背景にはプロジェクト自体の成果だけではなく、渋谷区という自治体を巻き込んだ連携であることも評価いただきました。
これら二つの事例には複数の企業が参画していましたが、一対一での連携に留まるよりも、一対多で話し合い、なるべく多くの主体を巻き込むことも大事だと考えています。

渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト、一般社団法人渋谷未来デザイン/スマドリ株式会社イメージ画像
出所:渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト、一般社団法人渋谷未来デザイン/スマドリ株式会社

官民連携、産官学民連携を行うにあたって難しさを感じる部分はどこにありますか。

官民連携をCSRや社会貢献という軸で捉えている企業がいまだに多く、地域での連携プロジェクトに予算や人員が十分に投入されないケースが多いと思います。 社会的な課題をビジネスの機会として捉え、企業自身の成長や利益につなげる、いわゆるCSVの概念が日本では浸透していないことが大きな課題だと感じています。 短期的な視点でアウトプットやKPIを求めたり、行政や企業の人事異動によって思いを持った人が変わってしまったりする事例もあり、長期的な視点で計画やコミットメントを作ることも大切です。 本気でCSVを目指す企業がもっと出てくると社会が変わってくると思いますし、そのために私たちも成功事例を発信していきたいと思います。

札幌市はSAPPORO CO-CREATION GATEなど官民共創に力を入れていますが、どのようなところに期待していますか。

官民連携の可能性を広げていくことは様々なメリットがあると思います。SAPPORO CO-CREATION GATEの最大のメリットは、民間事業者がやりたいことの受け皿ができたことです。 例えば、地域の資源や場所を活用した実証実験などは民間事業者だけでは行うことができません。そのため民間事業者が行政と対話できる場がつくられたことは良いことだと思います。 今後、参画する事業者同士の横のつながりや、札幌市での事例を他の地域にも活かすことにも期待したいです。 例えば、渋谷と札幌でフェーズを分けて実証実験をできたりすると、民間事業者にとってもメリットがあると思いますし、各地域のエコシステムがオープンにつながることは色んな可能性を感じますね。

インタビューを終えて

ソーシャルイノベーションの街・渋谷区で産官学民の連携に取り組まれている長田様から、実際の事例をもとに、共創の大切さ、連携を実際の事業として価値にしていく大切さを語っていただきました。 様々な民間事業者との共創によるまちづくりに向けた第一歩として、札幌市は官民共創の窓口SAPPORO CO-CREATION GATEを開設しました。 札幌市も渋谷区のように、官民共創によって新しい価値が生まれ、これまで以上に魅力あるまちとなることが楽しみです。

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