
札幌市では、地域・行政課題の解決や新たな価値の創出を目指し、2024年7月、官民共創の取組として「SAPPORO CO-CREATION GATE」を開設しました。行政と民間企業が一体となって地域の課題を解決し、新たな価値を創造するための重要な一歩を踏み出しています。本フォーラムでは、SAPPORO CO-CREATION GATEのこれまでの活動や、具体的な連携事例の紹介、専門家による講演等を通じ、官民共創の重要性やこれまでの札幌市の取組成果、そして共創が持つ可能性について官民双方の視点から語られました。本レポートでは、その概要をお伝えします。
フォーラム概要
- タイトル
- SAPPORO CO-CREATIONフォーラム in 札幌~共創事例から広がる、新たな可能性の扉~
- 主催
- 札幌市
デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社
- 開催
- 2025年3月17日(月)15:00~17:45
- 会場
- 札幌市民交流プラザ SCARTS 3F クリエイティブスタジオ
アジェンダ
- 【開会挨拶】SAPPORO CO-CREATION GATEおよび札幌市の官民共創の取組報告
- 【講演】SAPPORO CO-CREATION GATE設置・運用支援事業者から見た官民共創の取組
- 【基調講演】なぜ今、官民共創なのか~社会の変化を歴史の時間軸で捉える~
- 【官民トークセッション】パネルディスカッション「官と民の共創事例に学ぶ、次なる挑戦」
【開会挨拶】SAPPORO CO-CREATION GATEおよび札幌市の官民共創の取組報告
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札幌市 まちづくり政策局長
浅村 晋彦 氏札幌市は2024年7月に、民間企業からの官民連携に関する提案受付や事業化のコーディネートを担うワンストップ窓口「SAPPORO CO-CREATION GATE」を開設しました。持続可能なまちづくりを進めるためには、既存の枠にとらわれないアイデアやノウハウを持つ事業者の皆様との連携がますます重要になってきていますが、この「SAPPORO CO-CREATION GATE」を開設して以来、民間事業者の皆様から70件を超えるご提案をいただき、そのうちの既に20件近くが連携の実現に向けて動いています。
具体的な事例としては、本フォーラムにご登壇いただく民間企業・団体の皆様に加え、事業連携協定や実証実験、市保有物の有効活用、セミナーの開催等が実現しているところです。また、官民交流機会の創出等を目的として、本日のフォーラムのようなイベント開催や市役所内部での人材育成にも取り組んでいます。
「SAPPORO CO-CREATION GATE」の今後については、2024年6月に北海道(札幌市を含む全域)が指定された国家戦略特区制度を活用した規制改革や規制緩和のアイデアについてもシームレスに対応していく考えです。加えて、今年度は小樽市様と連携し、小樽市の課題も「SAPPORO CO-CREATIONATE」のポータルサイトに掲載して官民連携のご提案を受け付けておりますが、来年度からさっぽろ連携中枢都市圏に対象を拡大して、活用いただける自治体の増加を目指していきたいと思います。
札幌市は、都心部の大規模な再開発やスタートアップの集積、金融・資産運用特区および国家戦略特区の指定等、大きなビジネスの転換点を迎えています。「世界都市・さっぽろ」が持つポテンシャルやブランド、フィールドをフルに活用し、共に社会課題の解決やビジネスの成長を目指していきたいと考えておりますで、皆様からのチャレンジングでアンビシャスな共創のご提案をぜひお待ちしています。
【講演】SAPPORO CO-CREATION GATE設置・運用支援事業者から見た官民共創の取組
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登壇者:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
ブランディングアドバイザリー シニアマネジャー 小田 剛 氏「官民連携」や「共創」というワードのトレンドは年々高まっています。従来の官民連携では、行政が公募を通じて民間事業者に依頼し、コストを削減することが主な目的であり、民間事業者は受託者として一方的に共創関係に従事する形が中心でした。
一方で、新しい官民連携では、札幌市が抱える課題に対してどう解決を図るかを民間事業者とともに考え、民間事業者がその課題解決を目指して事業を立ち上げる、すなわち双方が一つの課題に対して協力してアプローチする形が主流になってきています。よって、このような取り組みを実施する体制もまた、その重要性をますます増しております。
また、我々は実際に官民連携窓口のサポートをさせていただく中で、窓口を設置する3つの価値に改めて気づくことができました。それは
- 官民双方での対話に関する障壁の低下
- 対話を通じた相互理解の深化
- 対話をきっかけとした事業アイデアの発展と多様なプレーヤーの参加
さらに、より質の高い官民連携を推進するためには、官民双方の視点から事業の具体性を高め、庁内横断的に複数の政策的意義を持たせることが重要です。今後は札幌市内だけでなく、道内外の様々な企業が本事業に参画することで、より広範な展開が可能になると考えています。
【基調講演】なぜ今、官民共創なのか~社会の変化を歴史の時間軸で捉える~
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登壇者:株式会社ソーシャル・エックス/株式会社ソーシャル・エックス総研 代表取締役
合同会社million dots 代表
伊藤 大貴 氏現在、行政と民間企業が連携しながら社会課題を解決することで、行政は政策効果を得て、民間企業は収益を上げていくという取組が社会にとって必要であり、それが実現可能な社会になりつつあるとも感じています。
過去来、日本では官が社会をデザインし、産業を育成してきた流れがありましたが、1980年代頃を境に、「官から民へ」という言葉とともに、民間に権限を委譲する動きが進みました。しかし、最近ではその揺り戻しの動きも見られます。これは、官が主導するか民が主導するかという二元論ではなく、今、官と民が協力して取り組むこと、官民共創が求められているためです。
私たちは、官民共創を「行政と企業によるオープンイノベーション」と定義づけるとともに、民間ビジネスにおける価値創造のカウンターパートに「行政」も入ってくるのがこれからの社会、これからの時代と捉えています。
弊社は「逆プロポ」というスキームによって、社会課題の解決を通じて民間ビジネスが成長するだけでなく、同時に自治体も稼げるような仕組み作りを社会全体に浸透させていくことを目指しています。
官民共創に取り組む際、行政は組織内部の合意形成の難しさ、公平性の担保、行政・地域課題の的確な発信の仕方等の悩みを抱えています。官民共創の世界観というのはこれから広がっていくものの、今はまだ入り口であり、「相手を理解する」姿勢が官民双方に強く求められていると感じます。
また、ビジネスの側面からも、既に世界的な企業が脱炭素等の社会課題にどう対応しているか事細かに発信する時代です。新規事業だけに限らず、既存のビジネスが社会課題にどう貢献できているのかを証明していくことが求められます。
国が行政・公共サービスを行政だけで担い続けることの限界を提唱しているとおり、これからはいかに官民が協力し合いながら「公共」を創り上げていくことができるか、我々全員が直面する社会的なチャレンジとなります。
そのような中で、政令指定都市である札幌市が、積極的に周辺地域と連携しながら官民共創に取り組んでいく姿勢は、非常に有意義であり価値があることだと感じています。札幌を起点に北海道内外でこのような動きが広がっていくことを私自身とても期待しています。
【官民トークセッション】パネルディスカッション「官と民の共創事例に学ぶ、次なる挑戦」
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- モデレーター
- 株式会社ソーシャル・エックス 代表取締役
伊藤 大貴 氏
- 登壇者
- 株式会社コロンビアスポーツウェアジャパン
マーケティング部 ブランドマーケティングマネージャー 衛藤 智 氏 - ぴあ株式会社
執行役員 東海林 健 氏 - 一般社団法人SAPPORO PLACEMAKING LABO
代表理事 林 匡宏 氏 - 札幌市 まちづくり政策局政策企画部
公民・広域連携推進室長 玉井 和史 氏
概要
伊藤氏をモデレーターとし、衛藤氏、東海林氏、林氏より、自社の取り組む官民連携の事例紹介をはじめとして、札幌市との今後の取組の方針や本事業に期待することをお話いただきました。
2024年末に札幌市との包括連携協定を締結したコロンビアスポーツウェアジャパン社からは、アウトドアブランドという視点から見た札幌市が有する素晴らしい自然の魅力や、それらの自然の保全活動の重要性等が語られたほか、市内のスキーリゾートの推進における今後の連携について触れられました。
市内に新たな開発拠点「PIA TECH LAB」を設立し、さっぽろまちづくりパートナー協定を締結したぴあ社からは、市内の音楽やスポーツ等のエンターテインメントイベント等の展開・活性化による市内誘客促進や観光のさらなる魅力向上に向けた今後の取組方向性について語られました。
様々な企業・団体とエリアマネジメント協定を結び、多くの人々を巻き込みながら、これまでに40回以上の実証実験を通じて札幌市との官民連携の取組を進めるSAPPORO PLACEMAKING LABOからは、2024年11月に実施した旧NHK札幌放送局の跡地での実証事業「PLACE1(プレースワン)」の取組成果や実施までのチャレンジについて語られました。
セッションの最後には、札幌市公民・広域連携推進室長玉井より、札幌市との共創を通じ事業者の方々のバリューを高めていくこと、そして札幌市職員の間でも共創のマインドを持ち、実際に官民連携の経験を有する職員を増やしていくことが重要であるという点について触れられました。
フォーラムを終えて
本セッション後の交流会でも、参加者同士の活発なやりとりが行われました。官民連携に対する意識の醸成のみならず、連携の取組に興味関心のある様々な人々が直接対面し、コミュニケーションを深める貴重な機会となりました。今後も多様なプレーヤーに興味関心を持っていただき、地域の発展に資する官民連携事業の創出を推進できるようSAPPORO CO-CREATION GATEを軸とした活動に取り組んでまいります。