札幌市では、官民連携窓口「SAPPORO CO-CREATION GATE」の開設や、北海道が国家戦略特区に指定されるなど、官民共創の推進に向けた動きが加速しつつあります。 本セッションでは、秋元札幌市長をはじめ、各地域・各分野で官民共創をリードする方々に、共創のポイントやその重要性について、闊達にディスカッションしていただきました。 本レポートでは、セッション内で語られた内容の一部をお伝えします。
セッション概要
- タイトル
- 地域が目指す官民共創のまちづくり
- 主催
- 札幌市
- 開催
- 2024年9月13日(金)10:00~10:50
- 会場
- ACU-A (アスティ45 16F)
- 登壇者
- 福岡地域戦略推進協議会(FDC)事務局長
石丸 修平 氏
サツドラホールディングス株式会社 代表取締役社長 CEO
富山 浩樹 氏
リンクタイズ株式会社取締役/Forbes JAPAN編集長
藤吉 雅春 氏
札幌市長
秋元 克広
モデレーター
株式会社ゲート代表取締役 兼フリーアナウンサー
国井 美佐 氏
札幌市の官民共創に関する現状や取組
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セッション冒頭では、本年7月に「SAPPORO CO-CREATION GATE」を開設するなど、共創への取組を積極的に進める秋元市長から、意気込みが語られました。
「全国的な課題でもありますが、札幌市が抱える少子高齢化や人手不足などの社会・地域課題は、行政だけで解決するのが困難な状況です。 技術的な面だけでなく、規制の面でもクリアすべきことが多く、「民」の技術やノウハウを組み合わせながら、そして札幌や北海道の魅力を生かしながらこれらの課題を乗り越えていきたいと考えています。」
以後のセッションでは、登壇者3名と市長が闊達に意見を交わしました。
テーマ①「官民共創を推進するためのキーポイント」
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富山社長は、リージョナルインキュベーションセンター「EZO HUB」の運営の経験などから、北海道において各自治体と連携・共創した「枠組み作り」はかなり進んできていると感じているようで、 今後の共創に向けたキーポイントについては「これらの枠組みを生かして、いかに多くのプロジェクトや実例を作り出していけるかが重要になる。」とのお考えが示されました。
一方、石丸事務局長からはFDCと福岡市が協働で取り組んでいる民間事業者の実証実験を支援する「実証実験フルサポート事業」のご紹介がありました。 また、福岡ではソリューションを活用した官民共創による課題解決のみならず、都市全体の戦略や計画に対して官民で協働しながら解決に取り組む動きがあることに触れ、戦略や方向性に基づきながら、 一つの市だけではなく都市圏という広い視野でまちづくりを進めていく、その中で今自分たちがどの段階にいるのかを共有していくことが大切だと述べました。
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藤吉編集長は「仕組みはもちろん重要だが、地域と連携して産業が盛り上がっているまちの特徴として、行政内に(まちづくりに対して)熱い情熱を持った人がいる。」と熱意ある人物が民間からおもしろがられ、行政の中をいい意味でかき回すことが重要であると強調しました。 また、「富山社長が代表発起人である『えぞ財団』や福岡市の『スタートアップ都市宣言』のようなキャッチーな言葉は人の気持ちを惹きつける力があると思います。」とネーミングの重要性を指摘しました。 富山社長も「えぞ財団はあえて怪しげな響きで人を惹きつけるように名付けました笑。」と返答しており、やはりビジネスや経営においてもネーミングや遊び心は重要なようです。
秋元市長は、「札幌市でも民間出身の方を採用し、様々な場で活躍いただいている。多様な経験を有し、色々な視点で物事を見ることができる人材が行政に集まってくることは非常に大事だと思う。」と人材を重視していることを強調されました。 そして、「福岡市では、まちのビジョンや地域づくりへの思いが民間企業や団体の人たちとうまく共有され、積み上がっている印象がある。ビジョンを共有する方法など、参考にしていきたい。」と意気込みを示されました。
テーマ②「国家戦略特区」
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富山社長は「国家戦略特区に関しては民間がやりたいことに沿った規制緩和ができているかどうかがとても大事。 そして、実現に向けてすぐに行動に移すことで、より多くの人が集まるのだと思います。」と話され、 福岡など先行する区域ですでに実現されている規制緩和の事例を北海道でも積極的に活用していくことを提言されました。 これに対し、秋元市長も、後発で特区になったメリットとして、先行地域で苦労を重ねて実現された規制緩和の成果を札幌や北海道に取り入れつつ、 地域特有のアレンジを加えることでさらに有効に活用していきたい、と規制緩和の活用に意欲を示されました。
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石丸事務局長からは、規制緩和の領域では「民間企業が主体になる」という側面があるため、覚悟を持って取り組む人たちが必要であると指摘されました。 「基本的に民間事業者は既存の枠組み・ルールの中でビジネスをしている。その中で規制緩和がなければ実現できないビジネスモデルに対し、 どこまでリソースを投下できるかは経営判断としてとても難しいところがある。」と述べ、「そのため北海道なりの特徴を持って、多くの人が参画可能で、 将来的なビジネスや産業のタネになりそうな領域を掘り当てていくのがとても大事だと思う。」と語られました。
テーマ③「地域が目指す官民共創のまちづくり」
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藤吉編集長は地域の活性化がうまくいっている都市は、郷土愛が強いという傾向があると話され、「Jリーグの調査によると北海道のサポーターは年齢層が一番高いというデータがある。これは北海道コンサドーレ札幌には長年の熱いファンがいて、郷土愛が強いということではないか」と道民の郷土愛の強さを強調しました。 それに対し、石丸事務局長からは「地元愛という観点では、どれだけ地元の人たちのためになるかということを示していくのが大事。」と、自動運転などの先端技術を活用した実証を行う際、自治会や公民館などに足を運び、色々な方々と対話をするなど、社会実装に向けたご経験を話されました。 その結果、全国に先駆けてチャレンジしている福岡を自分も応援しようという地元の人々の機運が生まれていったそうです。
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また、続けて石丸事務局長から第三者的ポジションの人が官民の間にいることの重要性が語られました。 実際にFDCが担っているような、民間のポジションで、官民の違いを翻訳したり、第三者的な立場でやるべきことを示したりする役割が重要であると述べました。 これに富山社長も「札幌にもFDCのような組織ができると良い。 最初はこのような組織への参画を皆が躊躇することもあると思うが、事例を積み上げつつ、それがPRされていけば、札幌市も動いていくのではないか。」と思いをお話しされていました。
最後に秋元市長は「このNoMapsをきっかけとして、登壇者の皆さんとのつながりが深まったことは大変有意義な機会だった。官民共創を進めていく上では、事業者の皆様も色々と動いて多方面から関心を持ってもらうことが大事。 我々も覚悟を持って動くので、主体的に動いていただき、一緒に創り上げていきたい。」と意気込みを語られ、本セッションは締めくくられました。
セッションを終えて
約200名の会場は立ち見の観覧者が出るほどの盛況で、官民共創への関心の高さが感じられました。戦略やビジョンの共有などマクロな視点から、ネーミングといったミクロな取組まで、「官民共創によるまちづくり」のキーポイントが語られました。
登壇者の思いのこもった議論を受け、秋元市長も今後の官民共創の推進に更なる意欲を見せました。
北海道のゲートウェイでもあるこの札幌から、共創によってどのような価値創出がなされていくのか楽しみです。