社会課題が複雑化・多様化し、従来のように行政・民間の単独では解決が難しい時代を迎える中、行政と民間事業者がそれぞれの強みを活かしながら、課題解決に取り組む「官民共創」は、持続可能なまちづくりにおいて一層重要になっています。
このような背景を踏まえ、札幌市では新たな官民共創を推進するためのワンストップ窓口「SAPPORO CO-CREATION GATE」を新たに開設し、民間事業者から様々な課題解決の提案を受け入れています。
本フォーラムでは、札幌市をはじめとする官民連携に取り組む自治体と、産官学民の共創を実践・推進するゲストが一堂に集まり、「SAPPORO CO-CREATION GATE」を中心とした札幌市の官民共創の取組、各都市の官民連携の取組事例や意義、そして行政が民間に対して期待することが語られました。
本レポートでは、その概要をお伝えします。
フォーラム概要
- タイトル
- SAPPORO CO-CREATIONフォーラム~官民連携で何ができる?民間企業に求められるものとは~
- 主催
- 札幌市
デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社
- 協力
- 横浜市、名古屋市、福岡市
- 開催
- 2024年8月26日(月)15:00~18:00
- 会場
- デロイトトーマツイノベーションパーク(東京都 千代田区)
アジェンダ
- 【開会挨拶】&【講演】札幌市が目指す官民共創のまちづくり
- 【基調講演】官民連携の実例とトレンド
- 【講演】首都圏企業が地方で官民連携に取り組む意義とは
- 【トークセッション】政令指定都市の官民連携について
【開会挨拶】&【講演】札幌市が目指す官民共創のまちづくり
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札幌市 まちづくり政策局長
浅村 晋彦 氏札幌市は2024年7月に民間企業からの官民連携に関する提案受付、事業化のコーディネートを担うワンストップ窓口「SAPPORO CO-CREATION GATE」を開設しました。 新しい「共創の扉」を開き、民間企業の皆様との連携を通じ、豊かで魅力的なまちづくりの好循環を目指すとともに、今後の持続可能な社会の実現に貢献したいと考えています。
札幌市は自然環境と高度な都市機能が調和した街であり、沢山の魅力を有する一方で、少子高齢化の進行や生産年齢人口の減少といった重大な課題に直面しています。
これらの課題を克服しながら、持続可能なまちづくりを進めるためには、既存の枠にとらわれないアイデアやノウハウを持つ民間企業との連携がますます重要になっています。そこで札幌市では、「SAPPORO CO-CREATION GATE」を開設しました。 窓口では、民間事業者から官民連携に関する提案を受け付け、事業化に向けた庁内外のサポートや官民連携に関する情報収集・発信をワンストップで行います。さらに、官民の対話機会創出や、交流の場づくり、情報の発信を進めていきます。
都心部の大規模な再開発やスタートアップの集積、金融・資産運用特区および国家戦略特区の指定など、札幌は大きなビジネスの転換点を迎えています。 「世界都市・さっぽろ」が持つポテンシャルやブランド、フィールドをフルに活用いただき、共に社会課題の解決やビジネスの成長を目指していきたいと考えております。是非とも皆様からの共創の提案をお待ちしています。
【基調講演】官民連携の実例とトレンド
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登壇者:一般社団法人 渋谷未来デザイン
理事・事務局長
長田 新子 氏渋谷未来デザインは2018年に産官学民連携の組織として立ち上がりました。区役所や企業、教育機関、独立したメンバーにて取り組んでおり、様々な主体の連携やカルチャー・コミュニティの醸成を行っている団体です。 渋谷未来デザインは、人・企業・都市をつなぐイノベーションプラットフォームとして都市の可能性を開拓することを目標として様々なプロジェクトの構想・推進などの活動を行っています。
まちはヒト、モノ、カネが揃っており、プラットフォームとしての素地があります。 都市で多様な主体が集まり、課題を解決していく、「まちを使う」動きが現在求められています。様々なステークホルダーと共創して課題解決に取り組んでいくことが新しい、現代のまちの姿だと考えています。
社会課題の解決には、多様な主体の強みを生かす共創が重要となってきています。共創を実現するためには、人と人をつなぎ、事業を構想・推進するプロデューサーやリーダーの役割の必要性は増してきています。また、企業は社会貢献という軸だけで連携を継続することはできません。 実証実験にとどまらず、事業化してビジネスにしていくことが重要です。CSR(企業の社会的な責任)ではなくCSV(共通価値の創造)を目指すことが現在の共創に求められています。
【講演】首都圏企業が地方で官民連携に取り組む意義とは
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登壇者:デロイト トーマツ
ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
執行役CSO パートナー
伊東 真史 氏社会課題の解決のために一社が単体でできることは限られています。日本や地域には課題が山積しており、その解決のためには単一の企業による取組ではなく多業種での連携が必要です。特に日本で官民連携が重要とされる理由は、日本はヨーロッパのように「官」のルールメイキングが強くなく、アメリカのように「民」によるゲームチェンジも少ないためです。 だからこそ、社会課題解決のために「官」と「民」の力を合わせ、バランスよく連携を行うことが求められます。
首都圏企業が地方自治体との連携を行っていくことは大切です。地域の課題を「官」と「民」が連携して解決していくにあたって、当該地域の企業だけでは課題解決力が足りない場合があります。 だからこそ力のある首都圏企業が地方で官民連携を行っていく意義があります。企業にとって官民連携は社会実装の「場」が提供される機会であり、事業化やその後の展開を進めていく良い機会でもあります。
連携の成功のための足元の課題として、複数社での事業を行う実務上の難しさや、地方においてビジネスをまとめ上げていくコーディネーターの不足が挙げられます。 多業種をつなげていくことこそが連携において重要であり、各地域で成功体験や失敗体験を共有して、成功事例を広げていくことが、さらなる価値創造を広げていくためには重要です。
【トークセッション】政令指定都市の官民連携について
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ファシリテーター
一般社団法人 渋谷未来デザイン
理事・事務局長 長田 新子 氏
登壇者
横浜市 共創推進室 共創推進課長
古瀬 謙一 氏
名古屋市 総務局総合調整部
担当課長(公民連携推進に係る企画調整) 河村 英行 氏
福岡市 経済観光文化局 創業推進部
企業連携課長 髙村 正樹 氏
札幌市 まちづくり政策局政策企画部
公民・広域連携推進室長 玉井 和史概要
長田氏をファシリテーターとし、札幌市、横浜市、名古屋市、福岡市の政令指定都市の官民連携の担当者がそれぞれの官民連携の事例や課題、民間事業者への期待などを率直に語るトークセッションでした。 トークセッション内では「観光」、「ウェルネス」、「GX・金融」の3テーマで各都市が目指している/行っている取組が語られました。 札幌市からはこれから官民連携を推進していくにあたっての期待が、横浜市・名古屋市・福岡市からは官民連携の取組事例などについて語られました。 トークセッションの最後では、「行政が民間企業に求めるもの」が各都市によって一言でまとめられました。 札幌市は「お気軽に」、横浜市は「50-50互いを知る!」、名古屋市は「こわがらないで!!」、福岡市は「柔軟」でした。 これまでのフォーラムの内容も踏まえると、官民連携の成功のためには、民間事業者から行政に遠慮なく声をかけ、対等かつ柔軟な対話により社会課題の解決や新しいまちづくりを目指していくことが求められているということなのでしょう。
フォーラムを終えて
札幌市の玉井室長による閉会の挨拶では、今回登壇した政令指定都市との連携への意欲を語られました。
本セッション後の交流会でも、参加者の活発な交流が行われ、フォーラム全体を通じて、新たな共創への期待が高まるものになりました。