
ぴあ株式会社 取締役東出 隆幸様
【東出様プロフィール】
1965年三重県伊勢市生まれ。1989年関西学院大学法学部を卒業後、ぴあ株式会社に入社。電子チケット事業本部ソリューション事業部長、執行役員ライブ・エンタテインメント局長を歴任し、2023年に取締役執行役員就任。現在に至る。
入社以来、ライブ・エンタテインメント事業全般に亘る幅広い部門での業務経験を有し、現在は、全国のチケットぴあ事業、及び興行企画・制作事業の責任者としてライブ・エンタテインメント業界への貢献と発展を目指す。
貴社のミッションや、地方での連携の考え方について教えてください。
当社には、「ひとりひとりが生き生きと」という企業理念があり、ライブ・エンタテインメントを通じて人々の暮らしに活力を与えることを目指しています。
そのため、首都圏に限らず全国でエンタテインメントの機会を広げ、より多くの人に楽しんでもらうことが重要だと考えています。今回、札幌市と「さっぽろまちづくりパートナー協定」を締結しました。これは、2024年に立ち上げた当社初のエンジニア組織「PIA TECH LAB」の札幌拠点開設を契機に締結したものです。
しかし、私たちは単に拠点を構えるだけでなく、エンタテインメントを軸に地域と協力し、多くの人が生き生きと暮らせる環境を創出したいと考えています。今後は、行政の方々とも連携を深め、エンタテインメントを提供する機会を増やしていきたいです。

札幌市を開発拠点に選んだ理由や新たな開発拠点への思いを教えてください。
当社のシステム開発は、これまで外部リソースを活用して行ってきましたが、よりスピーディな対応、自社にノウハウを蓄積させるということで、外部発注から内製化にシフトすることを決め、開発拠点の候補地を探し始めました。
首都圏ではエンジニアの獲得競争が激しく、雇用の流動性も高いため、安定的な人材確保が難しいという課題があります。一方、地方では、地域に根ざして長期的に貢献したいと考える人材が多く、当社としても、社内初のエンジニア組織として、開発に携わるメンバーが自社サービスを愛し、長く働ける環境を整えたいと考えていました。
そのような中で、札幌市は大学や専門学校が多く、優秀なIT人材が豊富。そして、北海道全体としても地元定着率が高く、地元に対する愛着を持つ人が多いことから、札幌に拠点を開設することを決めました。
さらに、札幌には「初音ミク」をはじめとしたコンテンツ産業が根付いており、エンタテインメントとの親和性が高いことも大きな決め手となりました。
「PIA TECH LAB」という名称には、単なる開発拠点にとどまらず、札幌のエンジニアが主体的に試行錯誤し、アイデアを形にする「ラボ」にしたいという思いが込められています。札幌発の新たなサービスやシステムを生み出す拠点として、今後も発展させていきたいと考えています。
札幌というマーケットの可能性をどのように捉えていますか?
札幌はエンタテインメント市場として大きな可能性を持つ一方で、課題も存在すると感じています。例えば、全国ツアーの会場としてプレミストドームを活用する場合、東京・名古屋・大阪・福岡と比べて集客が難しいのが現状です。そのため、 単なるライブ開催だけでなく、観光とエンタテインメントを組み合わせ、より多くの人が札幌を訪れる仕組みを作ることが重要だと考えています。
現在、観光庁の実証事業として、株式会社ナビタイムジャパンと共同で「ユニタビ(参考:ユニタビ)」というアプリサービスを展開しています。このサービスは、サッカー観戦を「旅」と捉え、試合前後の時間を観光や地元グルメで楽しんでもらうことを目的としています。同様に、札幌で開催されるライブイベントにおいても、「エンタメ+観光」 の相乗効果を生み出す取組が可能ではないかと考えています。
また、プレミストドームの活用も積極的に進めていきたいと考えています。2025年は、3月にマラソンイベントを実施し、今後も首都圏で成功した企画のプレミストドームへの誘致を進めていきたいと考えています。ドームの規模を考えると、すぐに定期的な大規模イベントを開催するのは難しいかもしれませんが、今回の協定を活かし、行政の皆様とも連携しながら、札幌でのエンタテインメント市場の活性化に貢献してまいります。
札幌市との具体的な連携イメージはありますか?
当社では近年、イベントの主催や制作にも主体的に取り組み、チケット販売以外のビジネス領域を拡大しています。2024年には約600公演を主催しましたが、今後、イベント会場の確保や許諾手続きのサポートなど企画・運営面において行政の協力を得ることで、よりスムーズなイベント開催が可能になると考えています。
また、エンタテインメントの視点から北海道のマーケットを捉えると、行政と連携しながら活性化に取り組む必要があると考えています。市民向けやインバウンド向けのコンテンツ開発などにおいても、さらなる連携の可能性があるのではないでしょうか。
最後に、札幌市に対する期待や今後の展望を教えてください。
札幌は「都会の利便性」と「自然の豊かさ」が共存する、非常に魅力的な都市です。今回の協定をきっかけに行政の方々とのコミュニケーション機会が増え、その魅力への理解も日々深まっています。今後は、札幌のエンタテインメント環境をさらに充実させることで、将来的に他の企業も進出したくなるような環境づくりや、若い世代の地元愛の醸成につなげていきたいと考えています。
具体的には、すすきの周辺での新たなエンタテインメントスポット開発、文化・芸術と融合したエンタテインメントイベントの拡充、冬季スポーツや国際大会の招致活動の活性化など、楽しめる機会を一つでも増せるように取り組んでいきたいです。
インタビューを終えて
今回は、札幌市と連携協定を締結したぴあ株式会社 取締役 東出様にお話を伺いました。札幌市内での拠点開設が進む中で、官民で連携しながら札幌北海道のライブ・エンタテインメント市場のさらなる活性化に対する思いを語っていただきました。ライブ・エンタテインメントカンパニーとして更なる成長を続けているぴあ様と連携した取組にもご期待ください。
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●ぴあ株式会社とさっぽろまちづくりパートナー協定を締結しました
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