NoMaps実行委員会 事務局長廣瀬岳史様
【廣瀬様プロフィール】
大学卒業後、民間企業を経て民間シンクタンクに入社。以降10年にわたり、道内自治体の政策立案や地域活性化事業の運営等に従事。その後、現場により近いまちづくり系の会社に籍を移して、地域活性化や地域人材育成事業の企画・運営などに携わる。
2016年、NoMapsの前身の一つである札幌国際短編映画祭関連の調査業務に携わったことを契機に、NoMapsに立上げから参画し、産官学の多様な主体が関わる事業の調整役を担う。2017年4月より現職。
「NoMaps」について教えていただけますか。
「社会をいまよりもっと良くする」、「ワクワクする未来を自らつくる」という思いだけを合わせて、ジャンルや見せ方、やり方も問わずに、街中で同時多発的にイベントを行うことによって、多様な方が交わり、ネットワーキングとコラボレーションが起こっていく、そういう交流の場を創っています。
日本版SXSW※をコンセプトに2016年からスタートし、当初は映画、音楽、ITを柱としていましたが、近年では、「EDU」「SPORTS」「WELLNESS」「GLOBAL」など、多様なカテゴリーに広がっています。昨年は5日間40会場で125のプログラムが行われ、過去最高の5万5千人を動員しました。年々、主体的に関わってくれる熱量がある人たちも増えてきています。
※米国テキサス州オースティンで毎年開催されている音楽祭・映画祭・インタラクティブフェスティバル
10年近くの歩みの中で、さまざまな共創を生み出してきたと思いますが、
官民連携のメリットはどのようなところにありますか。
官民連携はあくまで手法であって、必ずしも行わなければならないものとは考えていません。「官」には、市民の方々に対する信用や発信力、公的スペースや公共施設等のリソースの活用などの強みがあります。それらと民間が持つ強みを掛け合わせることで、よりよい社会が創れるのであれば連携を行えばいいものと思っています。一方で「官」と「民」が連携することで出来ることは数多くあります。民間が営利活動だけではなく、まちや未来のために動いていこうとするときには、ほぼ全ての分野で行政との連携が必要になっていくものだと思います。
官民連携を進めるにあたって、難しさを感じるところはありますか。
官民連携を進めていく上での障壁という点では、「官」と「民」の文化の違いがあります。異なる文化の人たちが手を取り合うように連携することは簡単なことではないですし、行政職員が自分の責任になるからと及び腰になることもあります。「NoMaps」では、官民の間を仲介し、私たちができるだけ責任を引き受けながら、連携の実績を少しずつ積み重ねてきました。
官民連携を行う際に重要な部分はどこにあるのでしょうか。
行政職員の熱量が何よりも重要だと考えています。「NoMaps」では、これまで行政サイドに働きかけて共創がスタートすることがほとんどでした。その場合、連携にポジティブなマインドを持つ行政職員を見つけることが最初の動きとしてカギになると感じています。その点、札幌市の職員の多くは基本的に前向きに話を聞いてくださるので、実際に連携が形になっているケースも多い。これは私たちが活動する中で、経験値が蓄積され、行政職員のマインドが変わってきた部分もありますが、世の中の流れとして共創の機運が高まったことも背景にあると思います。
今後、連携を模索する民間事業者に向けて、札幌市の魅力や強みはどのような点にあると思われますか。
都市としての魅力度が高く、都市と自然が共存しているのは強みですし、北海道のハブとして考えてもポテンシャルは非常に高いと考えています。まちの発展の歴史的な背景から、しがらみが少なく自由でおおらかな気風があることも、オープンイノベーションに有利な点だと思います。また、札幌市はユネスコ創造都市ネットワークに「メディアアーツ都市」として加盟していますが、その背景にある“都市空間のメディア化”という概念にも私たちは共感し可能性も感じており、まちの様々なオープンスペースの活用に一緒に取り組んでいます。
札幌市では官民連携の取組を加速させていますが、どのようなところに期待していますか。
札幌市が仕組みを創り、率先して官民連携に取り組んでいく姿勢を示されたことで、共創の意識がより浸透し、更に取り組みやすい土壌が築かれていく可能性を感じています。これまで以上に連携に積極的なスタンスになって、さまざまなコラボレーションが生まれることを期待したいです。
「NoMaps」の周辺でも、札幌は面白い人が多そう、新しいことをやりやすそうと感じて、道外から企画に参画してくれる人が増えてきています。集まった人たちがつながって、新しいことを仕掛けていく土壌を創ることができれば、もっと面白いことができると思いますし、そういう風になればいいですね。今年の「NoMaps」でもネットワーキングやコラボレーションの場を創っていくので、わけわからないことやわちゃわちゃした感じも含めて体感してもらえたらと思います。
インタビューを終えて
「NoMaps」はわずか2名の事務局で、5日間に5万人を超える来場者が訪れるイベントにまで成長してきました。廣瀬様のお話からは、ここまで「NoMaps」を背負ってきた熱量がひしひしと感じられました。そんな「NoMaps」では、今年に入って行動規範とアンチハラスメントポリシーを策定されました。そのなかには、「不確かで曖昧な世界をこそ楽しみましょう」というとても印象的な言葉があります。不確かで曖昧な領域を回避せず、積極的に追い求め、ワクワクに挑む「NoMaps」の活躍にこれからも期待しています。
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