開発の成果に社会的意義を持たせるために
宇宙産業がなかなか進まない原因の一つに、エンジンの安全性の問題があります。現在、人工衛星に使われているエンジンの燃料は、ヒドラジンという液体です。空気に触れると爆発したり人間が吸い込むと中毒症状を起こしたりするなど危険性が高く、安全管理にも莫大なコストがかかっています。
一方で弊社が作っているエンジンの燃料は、液体ではなく固体です。普通のプラスチックです。これを真空状態で点火し燃料として保炎するところに、私たちの特許技術があります。危険性が全くなく、燃料そのものを手で持つこともできることは、実は業界ではとても画期的なことなんです。
この開発を長く続けてきたのは、北海道大学の永田晴紀研究室です。ここで培われた技術を特許化して、弊社で引き取りました。代表の平井翔大とケンプス・ランドンは元々この研究室の学生で、開発の成果が社会に出て行くことなく、社会的意義をもたらさない状況を打破したいと起業に踏み切りました。そして私を含むスタッフはみな、そんな2人の情熱に感化されジョインしています。


安全性を担保し企業の参入障壁をなくす
エンジンの実用化は、2026年末までにはと考えています。
それまでに実証実験という高いハードルがありますが、商品化された後は、弊社のエンジン開発拠点となる滝川市 旧江部乙中学校の校舎で製造予定です。
その暁には、関わる人たちの安全安心を担保するだけでなく、新しく参入する企業も増えたらいいなと思っています。危険性や高額な安全管理コストが原因で参入を躊躇している企業の中には、革命的な技術を持っている企業もあるはずです。
上場は創業当初から考えていました。開発した技術を社会実装して社会的によい影響をもたらすのが、弊社の使命です。これは宇宙産業全体のためになるものですので、中小企業のままでひっそりと研究開発を進めるよりは、上場して他の企業と支え合っていくのが人類のためになると感じています。

宇宙空間でコーヒー豆の栽培!?
弊社が描いているのは、人と物とが自由に宇宙空間を行き交うことができる未来ビジョンです。そう遠くない未来には、有人宇宙飛行や私たちの宇宙空間での生活もありうるかもしれません。それが実現したらですか?そうですね、私はコーヒーが好きなので、宇宙空間でコーヒー豆の栽培をしてみたいです。
夢のまた夢かもしれませんが、誰かが取り組んでいかなければ未来は開けません。
札幌で培われた弊社の技術が地球のみならず、宇宙に至るまでいい影響をもたらすと信じています。
北海道とともに宇宙へ
合言葉は「北海道とともに宇宙へ」。
北海道から宇宙へ、ではなく北海道を宇宙に連れていくイメージだといいます。
「これまでも、弊社は様々な企業様と話をさせていただき、教わりながら進んでいます。宇宙へ向けて色々な可能性があると思いますし、企業間のコラボレーションが生まれるのも面白いと思っています。
例えば北海道のサプライチェーンなど、何か北海道で生まれたものと一緒に宇宙にいきたいですね」と、伊藤さんは広がる可能性に目を輝かせます。