REPORT
2025.10.15

NoMaps GOVERNMENT 札幌市主催セッション開催レポート

今年度、NoMaps2025に官民連携をテーマとした新たなカテゴリ「GOVERNMENT」が登場。札幌市/SAPPORO CO-CREATION GATEでは、官民連携の機運醸成・新たな官民連携の機会の創出に向けた取組として、当カテゴリにおいて複数のセッションを開催し、道内外の自治体職員や民間企業、中間支援組織など多様な領域で活躍する方々にご登壇いただきました。

当日は想定を超える多くの来場者でにぎわい、NoMapsらしい熱量が感じられる場となりました。本レポートでは、市主催セッション内で語られた内容の一部をお伝えします。

官と民の共創がつくる新しい未来
~最前線のキーパーソンが語る共創の新潮流~

NoMaps GOVERNMENTの様子
◆開催日:
2025年9月11日(木) 11:00~12:00
◆ゲスト:
  • (株)ソーシャル・エックス 代表取締役 伊藤 大貴
  • 事業構想大学院大学客員准教授 中川 悦宏
  • デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社 マネージャー 石塚 理博
◆モデレーター:
カントミント株式会社 取締役COO 伊藤 諒
◆内容:

「GOVERNMENT」オープニングとなった本セッションでは、「官と民の共創がつくる新しい未来」をテーマに、官民連携の必要性や共創のポイント、新しい未来図について活発な議論が交わされました。
セッションの冒頭では、中川氏が「この10年ほどで、連携から共創へ、ハードからソフトへ移行し、評価指標もVFM(Value For Money)から社会的インパクトへと変化している」と指摘。続いて石塚氏は「2000年代から20年代にかけて、民間活力の活用から民間との共創へと、政策のパラダイムシフトが起きている」と述べました。さらに伊藤大貴氏は明治維新からの時代変遷に触れながら、「これからの50年の日本社会にはまだ明確な答えはないが、みんなでつくっていくフェーズにある」と語りました。
後半のテーマは「官民共創はどうすれば進むのか」。中川氏からは政策の目的・課題・ソリューションから共創の打ち手を整理するフレームワークが解説され、伊藤大貴氏は横浜市議時代に携わった横浜スタジアム改修のエピソードを披露しました。石塚氏からはBtoGにとどまらない共創の出口戦略についての話もあり、多岐にわたる経験や事例、ノウハウなどが共有されました。
最後に伊藤大貴氏は「官民共創による課題解決に向け、NoMapsが全国的な横の連携の起点になってほしい」と期待を込め、会場の熱気そのままに前向きなムードで締めくくられました。

実証のその先へ
〜スタートアップと自治体が描く共創の出口戦略〜

NoMaps GOVERNMENTの様子
◆開催日:
2025年9月11日(木) 12:20~13:10
◆ゲスト:
  • 東京都スタートアップ戦略推進本部 直井 亮介
  • 神戸市新産業創造課 福田 志織
  • 札幌市公民・広域連携推進室 松岡 伸
◆モデレーター:
一般社団法人Urban Innovation Japan 吉永 隆之
◆内容:

本セッションでは、行政とスタートアップが共に進める実証事業の意義や課題、出口戦略をテーマに議論が交わされました。官民マッチングプラットフォームを運営する吉永氏、自治体のスタートアップ支援を担う直井氏・福田氏、公民連携部門の松岡が、それぞれの立場から意見を寄せました。
冒頭、モデレーターの吉永氏が「なぜ実証実験を行うのか」「どのような成果指標で効果を測定するのか」といった基本的な論点を提示。直井氏は東京都のスタートアップ支援の意義を、福田氏は「Urban Innovation KOBE」でのアウトカムや事例を紹介し、松岡からは「SAPPORO CO-CREATION GATE」が目指す方向性が共有されました。
続いて「なぜPoCで止まりやすいのか」という課題が取り上げられ、社会実装につなげるための出口戦略や支援のあり方へ議論が展開。直井氏からは「現場対話型スタートアップ協働プロジェクト」や、本格実装につなげるための「枠予算」「政策目的随契」の取組が紹介されました。福田氏からは公益財団法人Soilと連携した資金助成や成長支援、松岡から「Local Innovation Challenge HOKKAIDO」と連携した資金・非金銭両面でのサポートなどが語られました。
最後には、東京都における公共調達参入自治体連携「ファーストカスタマー・アライアンス」や、さっぽろ連携中枢都市圏をはじめとする道内自治体連携が紹介され、自治体同士が継続的に協働する体制の重要性が共有されました。スタートアップと自治体が強みを持ち寄り、社会実装と事業成長を両立させる可能性が示された、実りあるセッションとなりました。

DX時代の統治システムをマップする。

NoMaps GOVERNMENTの様子
◆開催日:
2025年9月12日(金) 10:00~10:50
◆ゲスト:
  • 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 プロトタイプ政策研究所所長、シニアパートナー 弁護士 落合 孝文
  • 株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 東 博暢
  • 国立大学法人京都大学 大学院法学研究科 教授 稲谷 龍彦
  • freee株式会社 金融渉外部長 小泉 美果
  • 株式会社ポリフレクト 代表取締役社長 宮田 洋輔
◆モデレーター:
デジタルリテラシー協議会 事務局 小泉 誠
◆内容:

本セッションでは、デジタル化が進む現代において、デジタル化の進展に伴う行政や社会の変革について、専門家の方々にご登壇いただき議論を行いました。
議論は、デジタル技術の普及により、従来の都道府県や市町村といった物理的な行政区域の枠組みを超えた広域連携の必要性が高まっているという問題提起から始まり、登壇者からは、経団連が提唱する「バーチャル道州制」や「広域ビジョン構想」といった、デジタルを活用した新たな地域連携の動きが紹介されました。しかし、既存の組織構造や政治的なしがらみが、こうした変革の妨げとなる可能性が指摘されました。
この課題を解決するためには、人、組織、システムの3つの側面から変革を進めることが重要であると議論され、特に、社会実装を推進する「変革人材」の重要性が強調されました。この人材は、異なる組織や立場の間に入り、コミュニケーションを円滑にする「翻訳力」や「共感力」を持つことが求められ、また、このような人材を正当に評価し、育成していく仕組みを行政や企業が構築する必要性も示されました。
さらに、AIをはじめとする急速な技術革新に対応するため、政府や専門家が一方的に答えを示すのではなく、マルチステークホルダーが参加して未知のリスクに対応していく「アジャイルガバナンス」の考え方が紹介されました。これは、社会全体が試行錯誤を繰り返しながら、新しいシステムを構築していくというものです。
登壇者からは、組織のセクショナリズムを打破し、異なる専門分野の人々が協力しやすい環境を整えることが、これからの社会に求められる。DXは単なる業務効率化ツールではなく、行政区域や組織の壁を越え、新しい社会のあり方を構築するための基盤であり、この変革には「統治システムのアップデート」が不可欠であると結論づけられました。

共感がつなぐ行政と地域
~都市を動かす官民連携のリアル~

NoMaps GOVERNMENTの様子
◆開催日:
2025年9月12日(金) 11:00~11:50
◆ゲスト:
  • 札幌市 まちづくり政策局 公民・広域連携推進室 渡邊 祐介
  • 仙台市 まちづくり政策局 プロジェクト推進課 加藤 廣康
  • 名古屋市 総務局 総合調整部 総合調整課 南 彩
  • 横浜市 政策経営局 共創推進課 水谷 大士
  • 北九州市 財政・変革局 市政変革推進室 柳井 孝輔
◆モデレーター:
福岡地域戦略推進協議会 ディレクター 片田江 由佳
◆内容:

本セッションでは、札幌市、仙台市、横浜市、名古屋市、北九州市の政令市5市の官民連携の担当者が登壇し、行政と地域、民間が共感を通じてつながるための「現場のリアル」について各市の取組や課題、今後の展望について議論しました。


渡邊(札幌市):企業の提案を一元的に受け付け、関係部署とのハブとなる官民連携窓口「SAPPORO CO-CREATION GATE」を設立。市が持つフィールドを企業が活用する事例や、官民連携窓口設立時の経験談を紹介。

加藤氏(仙台市):学生や大学が多いという都市の特性を活かし、大学との連携を推進。短期的な利益だけでなく、中長期的な視点で重なり合う部分を見つけ、ともに挑戦していくことの重要性を強調し、連携事例としてオンライン診療の取り組みについて紹介。

水谷氏(横浜市):2008年から共創事業で庁内に官民連携の文化を根付かせ、職員が自発的に共創に取り組む文化が醸成されている点が強みと説明。

南氏(名古屋市):「NAGOYA FRONTIER」という窓口を開設し、企業と行政の「潤滑油」として機能している。職員が無自覚だった行政のリソース(広報誌など)が企業にとって魅力的な価値を持つことを発見し、活用する事例を紹介。

柳井氏(北九州市):指定管理者制度の見直しを機に、官民連携を「対等なパートナーシップ」と捉える哲学的な視点を提示。民間がビジネスとして参入できる「準公共分野」の拡大を行政が支援すべきという考えを提示。


本セッションは、各市が直面する課題と、それを乗り越えるための独自のアプローチを共有する貴重な機会となりました。各登壇者は、仕組みや制度はもちろんのこと、組織内で官民連携を推進する「人」を育て、その文化を浸透させていくことの重要性や、官民連携を成功させる鍵は「人」にあるという共通認識を示し、今後の全国的な官民連携の広がりに期待を寄せました。

人を呼ぶまちへ
~企業と自治体が考える未来のまちづくり~

NoMaps GOVERNMENTの様子
◆開催日:
2025年9月12日(金) 16:00~17:00
◆ゲスト:
  • サツドラホールディングス株式会社 経営企画グループ アライアンス推進チーム 安部 德行
  • ぴあ株式会社 北海道ライブ・エンタテインメントユニット チーフマネージャー 吉内 一夫
  • 小樽市 総合政策部官民連携室 主査 池田 貴裕
  • 北広島市 企画部企画課主査 村上 洋輔
◆モデレーター:
札幌市 まちづくり政策局政策企画部公民・広域連携推進室長 玉井 和史
◆内容:

本セッションでは、さっぽろまちづくりパートナー企業とさっぽろ連携中枢都市圏の構成市町村で、それぞれの取組実践例の共有と、官民連携、広域連携によるまちづくりについて議論しました。


サツドラホールディングス株式会社:「地域コネクティッドビジネス」をビジョンに掲げ、自治体とも連携し地域社会の課題解決を目指している。当別町との連携で店舗内に役場の支所を併設し、地域住民の利便性向上に寄与していることや、江差町で地域還元型EZOCAを導入し、地域経済の活性化に貢献している等の事例を紹介。

ぴあ株式会社:エンタテインメントがまちづくりに寄与する重要性を再認識し、地域住民や観光客に愛されるまちづくりを自治体とともに推進。冬季間に大和ハウスプレミストドームでマラソンイベントを開催するなど、札幌市との取り組み事例を紹介。

小樽市:まちづくりの指針においても官民連携がキーワードとなっており、昨年度専門部署も設置。シビックプライドの醸成や住民の地域課題への関心度の向上、交通事故の発生防止等、様々な課題における取組事例を紹介。

北広島市:北海道ボールパークFビレッジの開業を契機に、官民連携で「ボールパーク構想」を推進。JR北広島駅前の開発やシェアサイクルサービスの導入により滞在・周遊を促し、Fビレッジを基点とした地域経済へ効果を波及するための取組も紹介。


官民で取組を進める上で感じた難しさや、取組の広域化の可能性についても意見が交わされるなど、実務担当者ならではの視点によるセッションとなりました。地域の課題が複雑化する中、多様な主体が関わりあい、新たな視点を取り入れながらまちづくりを進めていくことが重要であるとの認識が共有されました。

NoMaps GOVERNMENTを終えて
NoMaps GOVERNMENTは、初開催ながら全11セッションで1,000名を超える来場があり、官民共創への関心の高さとともに、会場全体の熱量の大きさを強く感じました。行政と民間など多様な立場の方々が交流し、互いの視点や課題意識を持ち寄ることで、共創の機運が高まる場になったと思います。
札幌市/SAPPORO CO-CREATION GATEでは、今後もこうした対話と共創の機会を継続的に設け、社会課題の解決と新しい未来の創出に取り組んでまいります。

NoMaps GOVERNMENTの様子
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