REPORT
2025.01.31

SAPPORO PLACEMAKING LABO 代表理事 林匡宏様・監事 岡⽥吉伸様

林匡宏様・岡⽥吉伸様画像

SAPPORO PLACEMAKING LABO 代表理事林匡宏様・監事 岡⽥吉伸様

【林様プロフィール】
株式会社commons fun 代表取締役。博士(デザイン学)。絵師。

【岡田様プロフィール】
株式会社創伸建設 代表取締役。

【SAPPORO PLACEMAKING LABO】
2021、2022年の実証実験を経て本格始動した、札幌市都心部の公共的空間を活用したまちづくりを行う組織。「空間創造」「プロセス構築」「知の共有」という3つの柱を掲げ、行政・企業・教育機関・地域等が有機的に連携する仕組み作りを推進する。札幌市の『まちづくり戦略ビジョン』で掲げる都心の将来像を見据えながら、日常の中での新たな価値創出に取り組んでいる。

林匡宏様画像

SAPPORO PLACEMAKING LABO設立の背景を教えていただけますか。

(林氏)札幌らしさを追求したいという思いが出発点でした。これまで都市計画や開発に関わる中で、東京や他都市のルールをそのまま札幌に適用するだけでは「らしさ」は生まれないと感じていました。

札幌らしい景観や文化を形にするには、多様な世代が参加し自由に意見を交わす場が必要だと思い、SAPPORO PLACEMAKING LABOを設立して、公共的空間を舞台にした活動を始めました。その過程で、若い世代の自由な発想や率直な意見が私たち大人にとって新たな気づきや刺激をもたらしてくれると実感しています。

若い世代を巻き込むなかでの気付きや学びはありますか。

(岡田氏)SAPPORO PLACEMAKING LABOの活動に、若者だけではなく、幅広い世代の方々に関わってもらっています。中でも若者ならではの自由な発想や率直な意見は刺激となっており、我々の活動の中で大きな価値を生んでいます。例えば、高校生や大学生に既存のルールを説明すると、「こんなの意味ないじゃないですか!」と純粋で当たり前のことを言ってくれる。それを聞いて、私たち大人も基礎的な部分に立ち返ることができるんです。これが自分たち(大人たち)よがりにならない、本来のまちづくりのスタートなのではないかと気づかされます。

また、若い世代がプロセスを通じて成長していく様子は非常に面白いです。例えば、これまで社会に触れる機会が少なかった高校生たちが、自分の意見やアイデアを発信し、社会とつながる中で進路や考え方を大きく変えていく姿を目にしてきました。それはまちづくりを次世代につなげる上でも非常に重要なことです。

(林氏)一方で、若者の話を聞くだけでは官民連携ではなく、文化祭で終わってしまいます。イベントを行うことの本質は、まちの未来を考える「機運」や「スキーム」を作ることにありますし、「経済と文化のバランス」を取ることが重要です。世代や立場を問わず、それぞれが本気で向き合い、多様な意見や感性をぶつけ合うことを官民連携の最初の入り口として大事にしつつも、いかに持続的な仕組みを作るか、イベントを社会実装につなげるかが今後の課題であると認識しています。

11月に行われた「PLACE 1」への思いやチャレンジについて教えていただけますか。

参考URL:都心の一等地を活用した官民連携・実証実験を行います|SAPPORO CO-CREATION GATE 官+民で共に目指す。 (林氏)PLACE1は現在空き地となっている旧NHK札幌放送局の跡地の活用という実験的な取組でした。
札幌の文化が生まれた場所、札幌を好きな人間からすると一丁目一番地のような象徴的な場所を空き地のままにするのではなく、新しい札幌の価値を生み出す場所にしたいという思いから企画しました。また、札幌がこれからも「選ばれる都市」であり続けてほしい、北海道・札幌を若者や先輩たちに諦めてほしくないという思いもあり、多世代が集まる文化的な空間を創造することにもチャレンジしたところです。
結果的に、イベント当日は音楽ライブやバスケットボール、多世代が交流できるカフェスペースを設けたことで、普段何もない空き地に2日間で約6,000人が集まりました。地元の市民だけでなく観光客も一緒になり、カオスの中に新たな文化が生まれる瞬間を目の当たりにしました。来場者アンケートの結果からも肯定的な反応が多数寄せられましたが、特に高校生等の若者だけでなく、バスケットボールに随行した先生たちまでもが目を輝かせていたのが印象的でした。

官民連携を進める上で感じているポイントや難しさはありますか?

(岡田氏)PLACE1を通じて改めて思ったのが、ビジネス一辺倒ではなく、経済性と公共性を考えていくのが官民(公民)で取り組む意義のひとつだということです。勿論、取組を運営していくうえで経済性は重要ですが、例えば昼間は学生の発表の場として公共的な活用をしながら、夜はきちんとお金をとって音楽ライブを行う等、経済性を求める時とそうでない時のメリハリをつけて取り組むことというような考え方が官民連携の重要なポイントだと思いました。

岡⽥吉伸様画像

また、官民連携を進める上では、行政と民間で質の高い会話を行い、本音を語り合う中でお互いを知ることが大事な要素だと感じています。何事においても相手がどのような立場なのか、どういう情報を持っているのかを理解したうえでメッセージを発することが求められます。そのためにも我々としては行政の職員がどういうことを考えているのかはもっと発信してほしいし、知りたいと思っています。ただ、どちらかの一方的な要望では何も進まないので、まず「一緒に何を目指すのか、取り組むか」を明確にする、それが官民連携のポイントだと思います。

林匡宏様・岡⽥吉伸様画像

今後の展望や札幌市への期待について教えてください。

(林氏)私たちは「探究都市・札幌」というテーマで活動しています。社会に対するマインドが開き、すべてのステークホルダーが共創し、チャレンジを実装していくプロセスが日本のどこよりも根付いていくことが理想です。
このため、札幌市が、これまで以上に職員の個人の思いや考えを発信する機会を増やしてほしいと期待しています。札幌市の看板を背負っている部分があるので難しいことも理解していますが、以前このまちをどうすれば良いかということについてある職員の方と半分職員、半分個人として話し合ったことがあり、非常に良いバランスの話し合いができました。
そういったところから、行政の皆様と信頼関係を築いていきたいです。

インタビューを終えて

今回は札幌市の公共的空間を活用した官民連携によるまちづくりに取り組む SAPPORO PLACEMAKING LABO様にお話を伺いました。札幌らしさを追求しながら、多世代を巻き込み、新たな文化の創造に挑戦する活動から、今後ますます目が離せません。

上に戻る